マイコプラズマ検査

 マイコプラズマは微小な生物であるため、肉眼で観察することは出来ず、培養細胞や培養液を汚染していても気付かないことがほとんどです。しかしながら、マイコプラズマの汚染によって、細胞内のほとんどすべての代謝反応、細胞の特性や増殖にまで影響を及ぼすとされています。気付かないうちにマイコプラズマ汚染が細胞培養環境に広がっている可能性もあり、日常的にマイコプラズマ検査を行うことが望まれます。

 マイコプラズマ検出法には数多くの方法が開発されていますが、当室では、蛍光色素による検出方法とNested-PCRにる検出方法を併用して、総合的に判定を行っています。

・マイコプラズマ検査の前に・・・

抗生物質が含まれているサンプルではマイコプラズマが検出されづらく、より正確に高感度にマイコプラズマの汚染を検出するために、抗生物質を含まない培地で3週間以上培養することが必要です。

蛍光色素による検出方法 ※ 参考文献 (1)~(4)

マイコプラズマの核DNAを蛍光色素(Hoechst 33258)で染色し蛍光顕微鏡で直接観察を行うことで、培養細胞のマイコプラズマの汚染を検出します。指標細胞としてVero細胞を用いてサンプルを共培養し、生存しているマイコプラズマの増殖を促すことで、高感度で検出することが可能です。マイコプラズマを増殖させる必要があるため、判定までに5-6日ほど期間が必要であり、また、サンプルおよび指標細胞の死細胞に由来する核断片等も染色されるため、判定には経験を要します。

※研究用ヒト臍帯血材料(HCB , CBF , C34)と研究用ヒト間葉系幹細胞(HMS)は検査を行っておりません。
 

マイコプラズマに汚染されたVero細胞の蛍光染色画像
マイコプラズマに汚染されたVero細胞の蛍光染色画像
(蛍光色素:Hoechst 33258、対象:核DNA)

Nested-PCRによる検出方法

16S-23S rRNAのスペーサー領域に共通に存在する塩基配列を標的としたprimerを用いて、Nested-PCR法により検出を行っており、微量のマイコプラズマによる汚染も短時間で簡便に検出・判定ができます。マイコプラズマは多くの種類が存在しますが、すべての種類のマイコプラズマを検出できるわけではないという問題点もあります。

Nested-PCR

Nested-PCRによるMycoplasma属検出方法 ※参考文献 (5)~(8)

このPCRで検出できる100数十種類のMycoplasma属のうち、当室で検出を確認している種は9種類。(*   は培養細胞に感染例が多い種)

Mycoplasma species 2nd-step PCR product (bp)
M.fermentans 365
M.pirum 323
M.salivarium 269
M.arginini 236
M.orale 290
M.hyorhinis 315
M.genitalium 252
M.pneumoniae 280
M.hominis 236

 

Nested-PCRによるA. laidlawii 検出方法 ※参考文献 (9)

Acholeplasma属の一種「Acholeplasma laidlawii」を検出します。

Mycoplasma species 2nd-step PCR product (bp)
A. laidlawii 249

<参考文献>

  1. IFO Res. Comm., 13, 52-58 (1987)
  2. Bull. Jap. Fed. Culture Collections, 4, 9-15 (1988)
  3. 日本組織培養学会細胞バンク委員会報告書(平成2年3月)
  4. 日本薬局方 バイオテクノロジー応用医薬品/生物期限由来医薬品の製造に用いる細胞基材に対するマイコプラズマ否定試験(第17改訂 参考情報 平成28年3月)
  5. Res. Microbiol., 144, 489-493 (1993)
  6. Rapid Diagnosis of Mycoplasmas,227-232[eds.I.Kahane&A.Adoni](1993)
  7. 蛋白質核酸酵素40(15):2361-2368(1995)
  8. Mol & Diag. Proced. in Mycoplasmology,vol.ⅡA7[eds.Razin&Tully](1996)
  9. 日本工業規格JIS K 3810-3:2003


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