送付された細胞材料の再培養方法(HPS ・HES)

  • 当室からの送付は通常の細胞輸送用のドライアイス中(約-80℃)ではなく、液体窒素を吸着させた保冷剤により約-170℃以下に冷却したドライシッパーにて発送しています。
  • 細胞材料が到着しましたら、直ちに培養を開始してください。
  • ※すぐに培養を開始しない場合はこちらを参照してください。

※発送時の添付書類(PDF)にもHPS・HESの再培養方法の記載がありますので、ご活用ください。

はじめに

※当室では「ガラス化法(Vitrification法)」を用いてヒトiPS細胞およびヒトES細胞(以下、HPS・HES)の凍結を行っております。 細胞株の凍結に一般的に良く用いられている、DMSOを用いて1℃/1分程度でゆっくり冷却を行い、細胞を凍結する「緩慢冷却法」と凍結及び融解の手順が大きく異なります。 本項をよく読み、操作手順をよく理解された上で、融解作業を開始することをお願いいたします(参考文献参照)。

ご注意ください

  • HPS・HESの凍結保存液は液量が少なく(200 μl) 融点が低い(-65℃前後)ため、凍結チューブの温度が-140℃以上に上がらないよう注意し、保管場所から作業用のクリーンベンチに運ぶ際は、たとえ近距離でも、液体窒素に浮かせて確実に冷却した状態で運んでください
  • 当室から送付された凍結チューブは、ごくまれに破裂する可能性がありますので、保管や融解の際には手袋とフェイスガードを着用してください。
  • 作業中の温度変化により、凍結チューブの蓋が緩む可能性がありますので、蓋が緩んでいないことを確認し、充分注意して作業を行ってください。
  • ガラス化法は凍結保存液の毒性が非常に高く、細胞が作業中に融解した高濃度の凍結保存液に触れる時間ができる限り短くなるように急速に融解し、培地で希釈することが重要です。
  • 液体状態の保存液に触れると、細胞は1分程度でほとんどが死滅してしまいます。凍結チューブを液体窒素から取り出してから、培地に戻すまでの操作を目安として30~40秒程度で行って下さい。


ヒトiPS 細胞およびヒトES細胞(HPS・HES)の融解方法

準備するもの

  • HPS・HESの凍結チューブ(ガラス化法で凍結したもの)
  • フィーダー細胞を播種した培養ディッシュ
    (融解後のHPS・HESを播種するため、各細胞株指定のものをデータシート記載の播種密度に従って60 mm dish 2枚+予備1枚を準備しておく)
  • HPS・HESの培養培地 (各細胞株に応じた指定の培地)
  • 液体窒素を入れた容器(凍結細胞の移動に使用)
  • ピンセット(液体窒素からの凍結チューブ取り出しに使用)
  • 凍結チューブ立て
  • 15 ml遠心チューブ
  • 1000 μlマイクロピペット及びチップ
  • その他、培養操作に必要な器具

操作手順

  1. 15 ml遠心チューブに培養培地を10 ml入れ、パラフィルムをしてウォーターバスで37℃に温めておく。
  2. 凍結チューブを保管場所から液体窒素を入れた容器に移し、冷却した状態でクリーンベンチまで運ぶ。
  3. 融解直前まで37℃に温めておいた培地をクリーンベンチ内に入れ、融解操作を開始する。
  4. ピンセットで凍結チューブを液体窒素から取り出し、必ず温めた培地1 mlを1000μlマイクロピペットで細胞凍結液に全量を吹きつけるように大きく10回程度ピペッティングを行い、完全に融解後、すぐに細胞懸濁液を(3)の温めた培地に回収する。
  5. 注) 凍結チューブを液体窒素から取り出してから、培地に戻すまでの操作をできるだけ迅速に行ってください。目安は30~40秒程度
    注) このステップで、冷めた培地の使用、不充分なピペッティング等の要因により、再凍結が起きると生存率が著しく低下します

  6. 200xG (1,000 rpm)、室温、3分間遠心します。
  7. 上清を除き、培養培地4~5 mlに懸濁後、用意しておいたフィーダー細胞の培養ディッシュに播種して培養を開始する。(凍結チューブ1本に対して60 mm dish 1~2枚)
  8. 培養中は毎日培地交換と観察を行う。
  9. 注) 融解翌日に細胞塊が浮遊していることがありますが、60mm dish全体で数十個程度のコロニーの接着が確認できます。接着しているコロニー数が少なく、浮遊しているHPS・HESの細胞塊が多い場合は、上清を遠心して取り除き、細胞を新しい培地に懸濁後、元のディッシュに播き直してください。
  10. ディッシュ全体の7~8割のコロニーが大きくなり、分化を始める前に継代操作を行います。継代時に使用するフィーダー細胞を忘れないように準備しておく。

参考文献
A simple and efficient cryopreservation method for primate embryonic stem cells.
Int J Dev Biol. 2004 Dec;48(10):1149-54.

細胞解離液及び凍結保存に関する特許は(株)リプロセルが保有しております。
【特許番号】特許4317337号、PCT/JP2004/016167
関連製品
霊長類ES細胞用剥離液(RCHETP002)
霊長類ES細胞用凍結保存液(RCHEFM001)



コメントは受け付けていません。