細胞材料の安全性・取扱について

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1 ) バイオセーフティレベルについて

 当室から提供している細胞には、BSL2での取り扱いが必要になる細胞があります。
 BSL2指定の細胞材料は、各細胞情報ぺージの「細胞基本情報」の項目に「BSL2」と記載してあります。
 また、ご使用にあたり「バイオセーフティーレベル2細胞材料利用誓約書(BSL2誓約書C-0069)」を提出して頂きます。
 これらの細胞の取り扱いには、BSL2 の基準を満たしている施設であることが必要です。
  【例】
  RCB3533:ED-40515(+)
 また、ヒト由来細胞株だけでなく、動物由来細胞株でもBSL2の取り扱いが必要な細胞株があります。
  【例】
  RCB0423 : BL312

●培養細胞におけるウイルス感染について
(1)「ヒト由来細胞株」に関するウイルス検査
当室で提供している「動物由来細胞株」につきましては、原則としてウイルス検査は実施しておりません。「ヒト由来細胞株」に関するウイルス検査は、以下の方針で実施しています。
● 「肝臓由来細胞」に関しては、B型及びC 型肝炎ウイルスに関する検査を実施する。
● 「血液系細胞」に関しては、細胞の種類を問わず、HIV, HTLV-1に関する検査を実施する。
● 「研究用ヒト臍帯血」に関しては、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、HTLV-1、梅毒に関する検査を実施して、全て陰性であった試料です。
しかし、上記の検査には偽陰性の場合もありますし、未知なる感染源の可能性を完全に払拭することも不可能です。従って、全ての細胞材料につきまして、「BSL 2」としての取り扱いを推奨しております。
培養細胞を取扱う際には、試料には危険性があることを十分に認識し、安全キャビネットの使用、実験用手袋・実験用メガネ・マスクの着用等、十分な安全対策をしたうえで使用して頂くことをお願いします。
取扱いのレベル等に関しては、使用機関によって安全対策が異なる場合がありますので、自身の所属機関の動物細胞・微生物取り扱い等の安全衛生に係る部署とご相談のうえ、取り扱っていただくことをお願いいたします。

(2)牛ウイルス性下痢ウイルス(Bovine viral diarrhea virus; BVDV)について
かつて細胞培養に使用してきた多くの牛血清の中にはBVDVが混在していました。近年では、BVDVが陰性の牛血清を使用している研究者も多いと思いますが、BVDVが混在する牛血清の使用を完全に排除できているか否かは不明です。
牛血清に混在しているBVDVが培養細胞に感染する可能性があります。また、BVDVの感染宿主としては、牛細胞以外の哺乳動物細胞にも感染する事が報告されています。当室が知る限り、BVDVがヒト及びマウスの正常細胞に感染するという明瞭な報告はないようですが、長期培養した細胞には様々な変異が蓄積されており、絶対に感染しないとは断言できません。(ウイルス受容体となり得る異常分子の出現等)
牛血清を使用して培養した細胞を研究に使用する場合であって、「BVDVの感染履歴」及び/又は「細胞がBVDVを産生している事」等が研究に影響するような場合には、細胞ご購入後に、利用者自身で検査を実施するようにお願いいたします。
既述のとおり、BVDV感染の可能性を特定の培養細胞に関して除外することは不可能です。そして、当室が頒布している牛血清を使用した全細胞株に関して当室で検査を実施することも不可能です。ご理解を頂きたく、よろしくお願いいたします。

(3)ウイルス感染の病理学的意義(主にヒト細胞に関して)
特定のウイルスに関して、細胞提供者(疾患者等)がそもそも保有していたウイルスなのか、樹立過程(培養過程)で感染したウイルスなのかを明確に判別することは非常に難しいケースが多いです。(臨床情報が入手できて陰性であったという情報があったとしても、偽陰性であった可能性を否定できません。)
そして、ウイルスによっては、疾患の原因であったり、疾患に深く関与していたりするケースもあります。例えば、Epstein-Barr Virus (EBV) は、白血病や悪性リンパ腫の原因となっていることは有名ですが、上部消化管の癌の原因になることも分かっています。

(4)利用者自身による検査のお願い
 BVDVの項目でもお願いしたことですが、「使用する培養細胞に特定のウイルス感染があると研究目的に支障がある。」というような場合には、細胞ご購入後に、利用者自身で検査を実施するようにお願いいたします。

 


 
2 ) 細胞材料について

理研BRC細胞材料開発室は、ヒト及び動物由来の細胞材料を国内外の研究者に広く提供することを目的に、1988年より細胞バンク事業を実施しています。ヒト由来細胞につきましては、倫理的な配慮が必要となります。
細胞バンク発足当初から提供しておりますヒトがん細胞株等につきましては「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(以下、指針)」の中の適用範囲「適用される研究」に記載されているウ①の試料に該当するものと判断され(下記に抜粋)、指針の対象としての取扱いはしておりません。
利用者の皆様におかれましても、指針の対象外試料として使用して頂くことが可能であると判断しております。
一方で、上記には該当しないヒト細胞も多数ご提供しております。ご利用条件は、インフォームド・コンセントの内容や寄託者のご意向を反映して、細胞毎に異なります。ヒト細胞のご利用に当たりましては、ホームページをご参照していただき、倫理的な手続きが必要な場合には、該当する手続きを実施して頂きたく、宜しくお願いいたします。
ご不明な点は、遠慮なく電子メールにてお問い合わせください。

参照:「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(文科省、厚労省、経産省、令和3年3月23日施行)からの抜粋

第3 適用範囲
1 適用される研究
この指針は、我が国の研究者等により実施され、又は日本国内において実施される人を対象とする生命科学・医学系研究を対象とする。ただし、他の指針の適用範囲に含まれる研究にあっては、当該指針に規定されていない事項についてはこの指針の規定により行うものとする。
また、次に掲げるいずれかに該当する研究は、この指針の対象としない。
 ア 法令の規定により実施される研究
 イ 法令の定める基準の適用範囲に含まれる研究
 ウ 試料・情報のうち、次に掲げるもののみを用いる研究
  ①既に学術的な価値が定まり、研究用として広く利用され、かつ、一般に入手可能な試料・情報
  ②個人に関する情報に該当しない既存の情報
  ③既に作成されている匿名加工情報

 





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