蛍光色素による検出方法

※日本組織培養学会の標準プロトコ-ルに準じて一部改変

1. 準備するもの

・検体

調整法 : 抗生物質を含まない培地で3週間以上培養した細胞を準備し、継代後または培地交換後3日以上経過した培養上清を採取する
※毎日培地交換を必要とする細胞の場合は細胞が十分に増殖したタイミングで培地交換直前の培養上清を用いる

・Vero細胞 (マイコプラズマに感染していないことを確認済のもの)
   細胞濃度 : 1-2 x 104cells / 35dish (0.5mL)
   必要なdish数 : 検体の数 + Negative control用 2枚

・Vero細胞用培地

組成 :MEM+10%FBS (用時調製)

・染色原液 (-20℃以下で保存)
室温で30-40分間、スターラーを使ってよく攪拌し、1回に使う必要量を分注し、アルミホイルで完全に包み遮光する

組成 :5.0mg Hoechst 33258 (American Hoechst, Co., 33217)
100mL PBS(-)

・Mounting solution(PH 5.5に調整、4℃ 保存)

組成 :22.2mL 0.1M クエン酸 (MW 210.14, 2.101g/100mL)
27.8mL 0.2M Na2HPO4・12H2O (MW 358.14, 7.162g/100mL)
50mL グリセロール

・固定液

組成 :99% エタノール : 酢酸 = 3 : 1  (用時調製、氷冷)

・ PBS(-)希釈固定液

組成 :PBS(-) : 固定液 = 3 : 1  (用時調製)

・蒸留水
・35mm dish
・カバーガラス 22 x 22 (mm) (乾燥滅菌済み)
・ピンセット
・スライドガラス
・蛍光顕微鏡

2. 方法

注意  (1) – (6) の操作は無菌操作を行う。
(7) – (17) の操作は無菌操作不要。
(8) – (14) の操作間はカバーガラスを乾燥させない。
特に(10) (11)の後で急激な乾燥が起こると細胞の形態が崩れやすくなるので注意。
(1) 乾熱滅菌した22 x 22 (mm)カバーガラスを更に火炎滅菌し、35mm dishに入れる (図1)
図1-a. カバーガラスをディッシュに入れる → (1)
(2) Vero細胞用培地を (1) のdishに2mL/dish分注する
注)この時にカバーグラスとdish底面との間に気泡が入らないようにする
(3) 1-2 x 104cells / 35mm dish / 0.5mL のVero細胞を均一になるように (2) のdishに播種する
(4) Negative control として、検体を加えないVero細胞を (3) と同様に (2) のdishに播種し、インキュベーター内(37℃、5%CO2)に静置する。
(5) (3) のVero細胞を一晩培養した後、培地を1mL除去し、そこに検体を1mL/dish添加する
(6) 検体の添加後5、6日間、インキュベーター内(37℃、5%CO2)に静置する。
図1-b. カバーガラスが入ったディッシュ → (1)
(7) 染色原液をPBS(-)で100倍に希釈し、アルミホイルで包んで30分間スターラーで攪拌する
(8) Negative control のVero細胞および検体を添加したVero細胞のdishから培地を除去する
(9) 2mL PBS(-)で洗浄し、上清を除去する(2~3回繰り返す)
(10) PBS(-)希釈固定液を2mL加え、15分間固定した後、 PBS(-)希釈固定液を除去する
(11) 固定液を2mL加え、5分間固定し、固定液を除去する
図2. カバーガラスをディッシュの縁に立たせて乾燥させる → (14)
(12) 2mL PBS(-)で洗浄し、上清を除去する(3回繰り返す)
(13) (7) の100倍希釈した染色原液を2mL加え、10分間静置する
(14) 蒸留水で2回洗浄し、カバーガラスを割らないようにピンセットでそっと外し、細胞面を上にして乾燥させる (図2)
(15) スライドガラスにMounting solutionを1滴ずつ滴下する
(16) 染色後、乾燥したカバーガラスを細胞が付着した面が下になるように、Mounting solutionの上に被せる
(17) 蛍光顕微鏡(Hoechst 33258の励起光)で蛍光観察(接眼レンズ x10、対物レンズ x40)を行う
(接眼レンズ x10、対物レンズ x100(油浸)による観察が望ましい)

3. 判定
培養細胞に対して、維持培養中に2回以上の検査を行う。

・陰性(-): Vero細胞の核以外の蛍光斑点が確認されない場合
・陽性(+): マイコプラズマと思われる微小な球状、数珠状、フィラメント状粒子 あるいは これらの複合体が核外蛍光斑点として細胞質内および細胞間隙に確認された場合

判定(-)

判定(+):フィラメント状
(Mycoplasma fermentans)

判定(+):球状粒子
(Mycoplasma arginini)

※ 当室で同定された培養細胞に感染するマイコプラズマの感染画像例 (宿主細胞は全てVero細胞)
Mycoplasma orale
Mycoplasma hyorhinis
Mycoplasma arginini
Mycoplasma fermentans
Acholeplasma laidlawii



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