EBウイルス(Epstein-Barr virus; EBV)は、ヘルペスウィルス科に属する病原性ウイルスの一種であり、唾液を介して感染を広げ、主にB細胞に感染します。EBVは95%以上の健常成人が感染し、その多くが終生共生的に保持される誰もが感染しているウイルスである一方、発症は稀ではありますが、バーキットリンパ腫など一部の悪性リンパ腫や上咽頭がんの発生と関連があることが明らかになっています。
当室では、ヒト血液由来細胞株(EBV形質転換B細胞株を除く)やEBV感染が癌発症の原因との報告があるヒト癌細胞株(口腔癌、食道癌、胃癌)について、潜伏感染関連遺伝子であるEBNA1*1または溶解感染関連遺伝子であるBALF5*2を指標とし、細胞に感染したEBVゲノムをqPCR法により検出しています。
*1 EBNA1: Epstein-Barr Nuclear Antigen 1
*2 BALF5: the BamHI-A fragment containing the fifth leftward open reading frame
1. 準備するもの
(1) 検体:細胞から抽出したゲノムDNA溶液
(2) 機器: Applied Biosystems QuantStudio3 Real-Time PCR System
(3) ソフトウェア:QuantStudio Design & Analysis Software、ThermoFisher SCIENTIFIC
(4) PCR 試薬:Applied Biosystems PowerUp SYBR Green Master Mix (Cat No. A25777)
(5) PCRプライマー
• EBNA1プライマー
EBNA1-F : 5’-ATCAGGGCCAAGACATAGAGATG-3’
EBNA1-R : 5’-GCCAATGCAACTTGGACGTT-3’
• BALF5プライマー
BALF5-F : 5’-CGGAAGCCCTCTGGACTTC–3’
BALF5-R : 5’-CCCTGTTTATCCGATGGAATG–3’
(6) スタンダード:それぞれのターゲット遺伝子について、合成DNAを利用する。
2. 方法
(1) スタンダードの調製:それぞれのターゲット遺伝子について以下のコピー数を調製する。
• EBNA1;1×106、1×105、1×104、1×103、1×102、1×101 (copies)
• BALF5;2.5×106、2.5×105、2.5×104、2.5×103、2.5×102、2.5×101 (copies)
(2) 検体の調製:2.5 ng/uL ゲノムDNA溶液を調製
(3) PCRマスターミックスの調製
DDW | 4 uL |
プライマーFW (10 pmol/µl) | 1 uL |
プライマーRV (10 pmol/µl) | 1 uL |
PowerUp SYBR Green Master Mix (2x) | 10 uL |
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Total | 16 uL /Sample |
(4) PCR用96 well plateにマスターミックスを16 uLずつ分注する。
(5) (2)で用意した検体を4 uLずつ加える。
(6) PCR program
UDG活性化:50℃ 2分 (ホールド)
Dual-Lock’DNA ポリメラーゼ:95℃ 2分 (ホールド)
反応サイクル(変性→アニーリング/伸長):95℃ 15秒 → 60℃ 1分 * (40サイクル)
融解曲線解析:95℃ 15秒 → 60℃ 1分 → 95℃ 15秒 * (1サイクル)
* 蛍光データ回収ポイント
(7) 結果解析
3. 判定
検査の有効性 (スタンダードのEfficiency、R2、Melt CurveのTM値などが有効条件内であること)の確認後、判定を行う。
4. 参考文献
PCRに関する参考文献
QuantStudio 3/QuantStudio 5 リアルタイム PCR システム 簡易操作ガイド
検出限界値決定検査に関する参考文献
血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン (厚生労働省)
Primerやスタンダードに関する参考文献
Generation of two human induced pluripotent stem cell lines derived from two juvenile nephronophthisis patients with NPHP1 deletion. Stem Cell Res. 2020 May; 45:101815. PMID: 32361464.
Screening for 15 pathogenic viruses in human cell lines registered at the JCRB Cell Bank: characterization of in vitro human cells by viral infection. R Soc Open Sci. 2018 May 2;5(5):172472. PMID: 29892436
Using synthetic oligonucleotides as standards in probe-based qPCR. Biotechniques. 2018 Apr; 64(4):177-179. PMID: 29661012