細胞材料を用いた研究成果が再現性のある信頼性の高いものであるためには、細胞材料の起源・特性等が明確にされていることが重要であり、当バンクではそのための品質管理に努めています。 ヒト細胞材料の起源の確認、即ち由来個体の識別同定を実施する上では、遺伝子多型解析が有用な解析方法の一つです。 最近開発されたShort Tandem Repeat-Polymerase Chain Reaction (STR-PCR) 法は、簡便で信頼性の高い遺伝子多型解析方法の一種であり、多種類の細胞株を対象としたハイスループットな解析を可能にしました。 そこで、当室が保有しカタログ及びホームページに掲載している全ヒト由来細胞株に関してSTR-PCR実験を実施し、その解析を終了しました。
結果として、「他の細胞が混入し、混入した細胞に置換されていた」または「他の細胞との取り違えがあった」と考えられる細胞株がいくつか検出されました(一覧表)。 これらの取り違え細胞または起源不明細胞の登録は抹消し、提供を中止しました。
これを教訓とし、今後新規に収集する細胞材料を含めて、ヒト由来細胞に関しては、収集時点及びその後の継代培養の過程で、STR-PCR解析を継続的に実施していく予定です。 特に、新規に提供を開始する場合には、起源が確認された細胞株のみを対象とすることとします。
尚、実施したSTR-PCR検査の詳細な報告書も公開しております(報告書)。
上記の細胞をこれまでにご利用いただきました研究者の皆様には、図らずも多大なご迷惑をおかけすることになりましたこと、心より深くお詫び申し上げます。 今後とも、細胞バンク事業へのご理解とご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。
2005年5月25日
細胞材料開発室
室長 中村幸夫