23CLN細胞についてのお知らせ

 ウシ由来細胞株として提供してきました23CLN細胞(理研登録番号RCB0179)がウシ由来細胞株ではないことが判明いたしました。ご報告を申し上げますとともに、利用者の皆様に深くお詫び申し上げる次第です。

 23CLN細胞は1987年6月に寄託を受けた細胞です。寄託当時に、細胞株の由来動物種を検査する一般的な方法として他の細胞バンク(米国ATCC等)でも実施していたアイソザイム(同位酵素)検査を、2種類のアイソザイムlactate dehydrogenase及びnucleotide phosphorylaseを対象として実施し、寄託者の情報通りウシ由来であると判定して提供をしてまいりました。アイソザイム検査とは、多種類の動物が共通して持っている同じ酵素でも動物種によって構造が異なり、電気泳動によって移動度が異なることを利用して、動物種を判定する生化学的な検査方法です。
 近年、細胞が由来した動物種のより精度が高い検査法として、ミトコンドリアDNAを対象とした分子生物学的な種の同定法(ミトコンドリアDNA同定検査)が開発されました(文献1)。当室でも、2011年より、新規に寄託を受けた細胞については、ミトコンドリアDNA同定検査を実施しております。しかし、2011年以前に寄託された細胞については、アイソザイム検査結果で可とし、ミトコンドリアDNA同定検査を実施しておりませんでした。
 先日、23CLN細胞の利用者から「23CLN細胞を用いてウシの遺伝子の単離を試みたが、PCRにて単離できない」との問い合せを受けました。そこで、ミトコンドリアDNA同定検査を実施しましたところ、23CLN細胞はウシ由来ではなくブタ由来の細胞であると判定されました。寄託直後の凍結保存細胞も同じ検査結果であり、寄託を受けた時点からブタ由来の細胞であったと考えられます。

 尚、23CLN細胞を提供した全ての利用者には、2015年3月4日までに陳謝と説明のご連絡を差し上げております。

【今後の対応について】
 今回の事例を踏まえて、ヒト及びマウス以外の動物由来の細胞株については、2011年以前に寄託を受けた細胞株も含めて、ミトコンドリアDNA同定検査による検査が可能な動物種については、提供前に検査を実施することといたしました。

 尚、当室では、ヒト細胞株のルーチン検査として、2004年からSTR(Short tandem repeat)多型解析を導入し、誤認ヒト細胞株の排除に努めております(文献2)。また、マウス細胞株に関しましては、由来したマウス系統を同定するSSLP (Simple Sequence Length Polymorphism)解析を導入し実施しております(文献3)。

 本件に関するご質問やご要望等がございましたら、ご遠慮なく下記までご連絡いただきますようお願いいたします。

 引き続き、理研バイオリソースセンターの事業に対してご理解とご支援を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。

【文献】
1. Ono, K. et al. Species identification of animal cells by nested PCR targeted to mitochondrial DNA. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 43: 168-175 (2007)
2. Yoshino, K., et al. Essential role for gene profiling analysis in the authentication of human cell lines. Hum. Cell 19: 43-48 (2006)
3. Yoshino, K., et al. Development of a simple method to determine the mouse strain from which cultured cell lines originated. Interdisciplinary Bio Central 2: Article No. 14 (open access journal) doi: 10.4051/ibc.2010.2.4.0014 (2010)

【お問合せ先】
   〒305-0074 茨城県つくば市高野台 3-1-1
   理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室
   室長 中村幸夫 E-mail: yukio.nakamura@riken.jp
   電話:029-836-9139   FAX: 029-836-9049



コメントは受け付けていません。