ヒト末梢血から単離したB細胞は、サイトカインの添加や栄養細胞(feeder cell)との共培養などの方法を駆使しない限り試験管内で増殖させることは困難です。 一方で、EBV感染により増殖能を獲得したヒトB細胞株には以下の特徴があります。
(1) 相当な期間(少なくとも数年間)添加物等なしで増殖し続ける。
(2) ゲノム構成を良く維持している。
(3) 半固形培地内でのコロニー形成能や免疫不全マウス(ヌードマウスなど)における造腫瘍性などの悪性形質は示さない。
(4) 慣例的に不死化B細胞株と呼称されている。
(4)の理由から、理研バイオリソース研究センター細胞バンクでは、EBV感染により増殖能を獲得したヒトB細胞株を「不死化細胞」と呼称しております。 しかし、当該細胞は真の意味での不死化細胞ではありません。長期間の培養を経てクライシス(増殖停止)を起こす細胞であります。 ただし、長期間(少なくとも1年以上)にわたって培養した後には、染色体異常などを伴い、テロメレース活性(テロメア維持機構)を備えた真の不死化細胞が出現することもあります。
<参考文献>
(1) Nilsson K., Human Cell 5: 25-41 (1992)
(2) Sugimoto M. et al., Cancer Res. 64: 3361-3364 (2004)